第2項までで、大麦に生まれた貴方はウイスキーの赤ちゃん「ニューポット」にまで姿を変えました。最終項では貴方(ニューポット)が樽で熟成され一人前のウイスキーに育ち、出荷されるまでを紹介したいと思います。
目次リスト
ウイスキーの製造行程 ステップ⑤ 熟成(マチュレーション)※ウイスキーは樽の中で成長する
蒸留されたばかりの貴方(ニューポット)は無色透明で、元気いっぱいな赤ちゃんのようです。アルコール度数も65〜70%と高く、刺激の強い荒々しいお酒。
貴方(ニューポット)がウイスキーらしい美しい琥珀色で、深みのあるまろやかな風味や味わいを身につけるには、樽での熟成が不可欠なのです😌☝🏻
この樽熟成の行程、育つ環境や時間によってそれぞれのウイスキーの個性がより変化していきます。5年、10年、中には20年、30年といった長い期間熟成されるウイスキーもあります。
まさに人間の成長過程を思わせるようなウイスキーの熟成について見ていきましょう☺️
樽熟成の仕組みとは?
樽にニューポットを詰める際は、一般的にアルコール度数を63%前後に加水をしてから詰められます。
貴方(ニューポット)は樽に詰められると、ウェアハウスと呼ばれる「熟成庫」へ運ばれ貯蔵されるのです。5年、10年。さらに寝かされる場合もあります。
では、長い熟成期間の間に「樽」の中では何が起きているのでしょうか??
長期間樽に寝かせることで、蒸留直後の不快な香りや刺激が取り除かれ、酒質がまろやかになります。更に樽の木材から香り成分であるバリニンや、タンニンなどのポリフェノール、色素成分などが溶け出し、複雑な風味や色が貴方(ニューポット)に影響を与えていきます。
熟成樽は「呼吸」をして生きている
ウイスキーは樽の隙間を通して少しずつ蒸発します。そして代わりに外気を取り込んでいるのです😌
つまり「呼吸」をして生きている。
この現象を「蒸散」と言います。
この時に不快な香りの一部が樽の外へ放出され、成分の濃縮が生じ熟成が進みます。
私はこの「呼吸」をしているウイスキーに、人間らしさを感じてしまいます😌❤️
まるでスヤスヤ眠って成長していく赤ん坊のようですね☺️
樽で熟成している間にウイスキーは「蒸散」し、量が減ってしまいます。これを「エンジェルズシェア」と言います。冷涼なスコットランドでも、年間に2〜3%のウイスキーが減ります。それを「天使が飲んだ分だけウイスキーは美味しくなる」と言われているのです。とても素敵な表現ですね🤗❤️
ウイスキーの成長は育ち方で変わる
私は先程、ウイスキーに人間らしさを感じると言いました。
人間に例えるならば、貴方(ニューポット)が詰められる樽は「家や家庭』。貯蔵される貯蔵庫は住んでいる国や地域と言えます。
なぜなら、詰められる樽にも木の素材、大きさ。貯蔵される貯蔵庫には気温、湿度、標高、その蒸留所の土地柄が大きく関わってくるからです。
樽の種類
樽とは、貴方(ニューポット)が住む家や家庭環境のようなものですね😌
樽はカスクやバレルとも呼ばれ、全てがオーク(ナラの木)材を使用しています。
中でも一般的なのはアメリカンホワイトオークやヨーロピアンオーク(コモンオーク)などです。材質はもちろんですが、その樽が新品なのか、他のお酒が入っていた樽なのかによっても、味わいに大きく影響してきます。
また樽の大きさも熟成に大きな影響をもたらします。
- 一般的には大きい樽は熟成が遅く、小さい樽は熟成が早いと言われています。中に入っているウイスキーが樽に触れる表面積が違うからです。
樽のお話に関してはとても複雑なので、今後違う記事で詳しく解説してみたいと思います☺️
蒸留所の土地柄や熟成庫の環境での違い
樽の保管方法や保管環境によっても、ウイスキーの熟成に様々な影響をもたらします。
例えば、蒸留所の標高、平均気温や湿度、寒暖差の度合いに大きな違いが生まれます。
気温が高い方が「蒸散」も進みやすく、熟成も早くなると言われています。
また、蒸留所が山に囲まれていたり、海沿いに建っていたりと周りの環境も影響をもたらします。前述したように樽は「呼吸」をしています。よって外の空気の香りなども取り込みます。極端に言えば、森の香りや海の香りがウイスキーに染み込んでいくイメージですね☺️
熟成庫自体の環境にもそれぞれ違いがあります。
- ダンネージ式・・・伝統的な熟成庫の方式で、土の床の上に木のレールを敷き、そこに樽を並べます。その上に更にレールを乗せ3段まで積んで貯蔵します。床が土になっているため、その土地の風土がよりウイスキーの熟成に影響を与え、蒸留所の個性が引き立ちます。
- ラック式・・・鉄製の棚に樽を並べていく方式で、ダンネージ式よりも大量の貯蔵が可能です。大きい蒸留所ではダンネージ式と並行して採用している場合が多いです。積み上げる段も高く、熟成庫内の温度管理も重要になります。
ウイスキーの熟成には、化学や理論だけでは説明できないことが多くあります。言わば「自然の神秘」です😌☝🏻例えば、同じ材質で同じ大きさの樽を、同じ熟成庫で同じ期間保管したとしても、それぞれが同じ味わいになるかは分かりません。そんな不確定なことすらも、私はウイスキーの魅力だと思います☺️❤️長い年月をかけて、樽を開けた時に答えが分かる。答えが出るまでに何十年かかるのか、、、。人生をかけた壮大なお酒。それがウイスキーなのです🥃
ウイスキーの製造行程 ステップ⑥ ブレンディング行程 ※ブレンドによってウイスキーは完成する
長い熟成期間を終えた貴方はついに、一人前のウイスキーの原酒として成長しました。
もちろんそのままでも素敵な魅力を持ったウイスキーですが、そのままボトルに詰められるわけではありません。
ほとんどのウイスキーの場合、商品として完成する味わいや香りがすでに決められています。
それぞれの蒸留所は、〇〇10年、〇〇18年といった具合に、そのボトルごとに常に一定の品質を保つ必要があるため、貴方以外のウイスキーたちも吟味し、ブレンドをして目標の味わいを作り出すのです。
ここで活躍するのが「ブレンダー」と呼ばれるウイスキー職人です。
ブレンダーは決められたレシピをもとに、いくつもの樽を厳選し、自らの舌と鼻でウイスキー原酒をブレンドしていきます。
蒸留所が目標とする味わいに最大限近づけるのです。時には数樽、多い時には数十樽をブレンドし、テイスティングを繰り返し、それぞれの樽の構成比率を見定めていきます。
言わば、その蒸留所の製品の運命を握っている。「プロ中のプロ」と言える存在です。
そしてようやく貴方は、蒸留所の1つの作品となるウイスキーとして完成するのです😌☝🏻
熟成が自然が生み出す「神秘」なら、ブレンディングは人が作り出す「芸術」。全ての要素が重なり合って、ウイスキーは出来上がるのです🥺❤️
ウイスキーの製造行程 ステップ⑦ 瓶詰め行程 ※ボトリング
ブレンディング行程でレシピが決まり、ブレンドされたウイスキーはようやくボトルに詰められます。
まずは不純物をフィルターにかけて取り除きます。樽から出てきたウイスキーは、アルコール度数が60%前後あり、それぞれの商品に決められているアルコール度数まで加水して薄められます。※一般的には40〜46%ほどに合わせられることが多い。
中には、加水せずにそのまま瓶詰めする場合もあり、「カスクストレングス」と呼ばれるアルコール度数の高い商品となります。
冷却濾過とは?・・・ウイスキーの中には低温になった時に、白く濁った成分が沈殿する場合があります。味わいに影響はありませんが、消費者にいい印象を与えないこともあり、あえて冷却をして白い沈殿物を取り除く作業を冷却濾過(チルフィルタード)といいます。※なかには味わいを優先するため冷却濾過をしない商品もあり「ノンチルフルタード」と呼ばれています。
こうして無事にボトリングされた貴方は、「最高のウイスキー」として消費者の元へ旅立つのです❗️